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プリプロダクション時からゲームとドラマの融合を試みたメディアミックスの究極体

2013年4月15日、Syfyチャンネルにて放送が開始された近未来が舞台のSFアクション「DEFIANCE/ディファイアンス」は、過去に類のない試みを行なってドラマが作り上げられていたのである。それはドラマの製作と同時進行でゲーム版の開発も進められる極めて珍しいメディアミックス展開が画策され、ドラマ版の放映が始まる前の4月2日にPC、PS3、Xbox 360の機種で発売。実は発売以前からPCにてベータテストも行なわれており、多くのゲームユーザーたちにドラマ「ディファイアンス」の名は大きく知れ渡っていたのである。

劇場用映画と同時進行でゲームが開発されることは多々ある。映画『マトリックス リローデッド』と同じ時間軸で物語が進められていくゲーム『エンター・ザ・マトリックス』登場以降、様々な映画会社がゲームメーカーとタッグを組んでメディアミックスを行なってきたが、ドラマ製作陣営と共にプリプロダクション(撮影前の作業の総称)へ参加しながらその側面でゲームの開発を進展させていく例は未だかつてなかった。

この試みは大成功。SF好きとゲームユーザーは相性も良くシンクロしており、ドラマのプロモーションが放送開始前からゲーム側より繰り広げられたことで、ゲームの購入有無関係なく、第1話を興味本位で視聴したゲームユーザーが大変多かったのだ。その第1話後半における異星人や巨大なロボットたちの軍勢が5,000人ほどの住民で溢れかえる街ディファイアンスへ攻め込んで来るのを阻止するべく、大規模な戦闘になるシーンはゲーム的光景を見せるよう狙った演出で展開しており、巧みに計算されたドラマとゲームの見事なクロスオーバーと言えよう。

さて、そのゲーム版とは一体どのような物語なのかと説明すると、プレイヤー自身はハイテクノロジーに長けた技術者カール・フォン・バッハがCEOを務めるフォン・バッハ・インダストリーズに雇われ、ドラマ版シーズン1後半で登場するアース・リパブリック(地球共和国)へ参戦するアークハンターとなって、襲撃してくるヘルズバグや異星人たちと戦闘しながらサンフランシスコへ向かい、破壊された後のゴールデンゲートブリッジ近辺のベイエリアを目指すことになる。簡単に説明すると、荒廃した地球に来襲する多くの異星人たちからの侵攻を防ぐために様々な銃火器を使って撃退していくのがゲームの内容。

ただそれだけでは良くありがちなゲームデザインではあるが、本作はオンライン専用であり、見知らぬユーザー同士が多人数で参加してその襲撃から地球を守っていく部分がゲーム版『ディファイアンス』に秘められた最大のポテンシャルなのだ。50人とかが集まって巨大で強大なモンスターへ銃撃していく協力プレイを一度味わえば本作の面白さは伝わるはず。  とてもユニークな試みだったのがゲーム内で行なわれたコンテスト。特に熾烈な争いが繰り広げられたのは昨年、シーズン1放送時期にゲームの腕前が優れていた上位10名のユーザーに対しドラマ版の脚本家たちが人物設定を施し、Facebookの公式ページへ掲載。「ディファイアンス」ファンたちからの投票で5名が選抜され、そこから番組製作サイドが入念な審査を行ない、優勝者1名がなんとシーズン2に登場するファンにとっては嬉しいイベントが催された。ドラマ版に実際のプレイヤーが登場するわけではなく、ゲーム内でそのユーザーが作ったアバターキャラが主人公のノーラン&イリサに絡んでいく様子。ちなみに優勝したのは女性キャラである。

ゲーム版の開発はドラマ版製作のプリプロダクションと同じく2008年8月から開始。双方が上手く歩み寄っての共同で製作が行なわれ、北米と欧州のサーバー維持費等含め7,000万ドル以上もの予算がかけられた。ゲーム自体の内容はドラマ版シーズン1終了後、ドラマ時間軸から暫く日数が経過しての物語であるため、『ディファイアンス』チームは今回の試みをチャレンジと受け止めた。しかし、ゲーム版が本領を発揮するのはシーズン2に入ってからなので、シーズン1を成功させないと多額の製作費が無駄になる恐れもあった負い目から、スタッフたちのプレッシャーは相当重かったと言う。

ゲーム版にとってのクロスオーバーで一番重要な部分も記載しておこう。当たり前ではあるがノーランとイリサが登場すること。ゲーム内のエピソード1では彼らをプレイヤー自身が護衛しながらサポートしていくミッションもあり、クリアするとノーランの衣装が手に入ったり、先を進めて行くとノーラン御用達のクライスラー社のダッジも愛車として使えるようになる。既にアナウンスされているのだが、ゲーム版に登場してきたキャラクターたちはシーズン2のドラマ版へ登場するシームレスな展開もしていくとのこと。それと本作はオンライン専用なので、定期的に新しいミッションが提供されていき、長い目で見ると……きっとシーズン3までは継続して遊べるのではなかろうか?(シーズン2でファイナルにならなければの話だが)

ちなみにPC版であればSteamのサイトからだと格安で購入できるので、興味があり尚且『ディファイアンス』の世界観をより楽しんでみたいという人は是非共、PC版から堪能して頂ければと。

ジャンクハンター吉田(吉田 武)
シネマゲーム研究家